PROXES DRIVING PLEASURE:闘う現場のリアル
世界一過酷なサーキットと呼ばれるニュルブルクリンクのノルドシュライフェ。
そこで開催される「NLS(ニュルブルクリンク・ロングディスタンス・シリーズ)」に、挑戦を続けている「TOYO TIRES(トーヨータイヤ)」。AMWではこのトーヨータイヤのスポーツタイヤブランドである「PROXES(#プロクセス)」を深く知るための短期集中連載をお届けします。第1回は、プロクセスのタイヤを履いたマシンでニュルブルクリンクを走る4名のドライバーに、実戦で使ったプロクセスの印象と2025年シーズへの意気込みを語ってもらいます。
中山雄一選手
目まぐるしく変化する過酷な状況下、柔軟に対応してくれる
ニュルブルクリンク24時間レースへの参戦経験がありましたが、コロナ禍でいったん中断し、2024年7月に、2019年以来初めてテストにニュルブルクリンクを訪れました。この6年間は日本国内のトップカテゴリである、SUPER GTのGT500クラスへ参戦しながらニュルブルクリンクへ挑戦していたのですが、日本のレースとは見える景色が全く違ってとても新鮮でした。以前、ニュルブルクリンク24時間レースへ参戦する為のライセンス「Permit」を取得の際にはRing Racingやチーム監督のUweさんにはとてもお世話になりました。
世界の一般的なサーキットでは路面の凹凸も少なく、特に日本国内のサーキットはフラットで、そのような凹凸のある個所が1周のうち、1箇所所あるかどうかです。それに比べてノルドシュライフェは173のコーナーの8割に凹凸があるので日本とは比較になりません。路面の凹凸は視界に入りにくく、そこを通過ながら車両を通して伝わってきますので、目に見えない数秒先の段差の事を考えながら、手前からリズムを取ってみるなど、周回を追うごとに経験値が増えて、私自身のドライブスタイルやテクニックの理解度が増しているのを実感します。
ノルドシュライフェでは砂が撒き散らされたり、雨が降ったりと様々なコンディションの中でのレースを強いられますのが、このノルドシュライフェを舞台に長年開発をされているだけに、プロクセスはドライバーのミスを許容してくれるキャラクターが際立っているタイヤだと感じました。
開幕戦では決勝レースでスタートドライバーを務め、レインタイヤで出走でした。路面は殆ど乾いているという状況だったので、レインタイヤの感覚をきっちりと把握するまでには至っていないという前提ですが……前夜に降った雨で乾いているのか濡れているのか分からない箇所や決勝前に降った雨でグリップが抜けてしまうかもしれないという怖さを感じると、コーナーに思い切って入っていきづらくなるのですが、路面状況が悪化した場合のキャパシティの広さを感じ取ることができました。ほぼドライになりかけの路面状況の中で200km/h前後の全開で踏み込むと、通常なら表面のゴムが溶け切ってしまい凄く危ない思いをするのですが、割と攻めても違和感がなくポジティブなのには、驚きました。
スープラの性質上、このマシンが持つグリップの出方や重心の高さから、ロールした際にグリップが抜けてしまうという特徴を持っているのですが、どの領域でもしっかりとタイヤがグリップしてくれましたね。さすがこのニュルブルクリンクを舞台にスープラで開発を続けているだけに、ノルドシュライフェの長い1ラップの中で変化するコンディションのなか——グリップレベルが上がったり下がったりするような過酷な環境にもマッチしているな、という印象を受けました。
私は半年ぶりのニュルブルクリンクだったので、まずはプッシュし過ぎないように慎重に走っていたのですが、その中でも同クラスのBMWに3秒落ちまでに近づけたことを考えると、マシンとタイヤがぴったりとマッチしていてパッケージングとしては凄く高い完成度になっているのではないかと思います。
私が今年挑戦する海外レースの第1戦となったのがNLSの開幕戦であり、世界屈指の難関コースからのスタートに少し不安な気持ちもあったのですが、PROXESがその不安を全部受け止めてくれるタイヤだったので、今シーズンの新たな挑戦の自信にもなりました。
また、Ring Racingはこのニュルブルクリンクで長年レース活動を行っているチームだけあって、「レース感」が凄く高いチームだと感じました。私がドライブするマシンは日本人コンビですが、ドイツでは日本とはレースの進め方が違う部分があり、日本のスタンダードがニュルブルクリンクでは通じないため、コミュニケーションをお互いしっかり取っていかねばと痛感しました。
Ring Racingの長年培ったニュルブルクリンクのデータに、私たち日本人ドライバーが得意とする職人技で細部を詰めていき、Ring Racingとトーヨータイヤ、そしてTOYOTA GAZOO Racingが結束して、素晴らしいプロジェクトとなるように頑張りたいと思います。
小高一斗選手
開発エンジニアとの近い距離が、タイヤ開発を迅速にしている
2024年のNLSにおいて既に「Permit」を取得出来た事もあり、今回はマージンがあるつもりで再びニュルブルクリンクへやって来たのですが、久しぶりに走ってみたところ、甘くはないな、と感じました。決勝レースの最後のスティントでちょっとずつコースを攻めることができ、攻めた中のマージンが最後の最後に出てきたかなと感じました。
私が想像をしていた限界のところの感覚だったり、マシンやコースのギャップを覚えているつもりが若干ずれていた部分もありますが、レースの最後の方で少しずつ理解度が増していくのが私自身でも分かりました。コースを習得するという部分では、今回のレースは凄く良い経験になったと思います。まずは特にトラブルもなく、レースウィークを通して無事に完走出来て良かったと思います。
ドライバーとして昨年の経験も踏まえてトーヨータイヤの現場エンジニアの方々にフィードバックし、更に良いタイヤを開発に役に立てるのならば、とても光栄な事だと思っています。トーヨータイヤの開発エンジニアとの距離は非常に近く、ドライバーの声を直接すぐに伝えることは大きな利点で、このようなひとつひとつのことがタイヤ開発を迅速にしているのだと実感しました。
ノルドシュライフェにしかないアップダウンやタイヤに掛かる高い負荷など、レースを通して培ったタイヤの強さや経験値は、量販車用のタイヤ作りにおいてもとても活かせるのではないかと思っています。
2025年はニュルブルクリンク24時間レースに初挑戦します。幸いにも私がいままで経験したNLSではドライコンディションでしか走った事がありませんが、24時間レースでは雨が降ったり、路面にオイルが流れたり、他車のクラッシュに巻き込まれる可能性もあり、様々な過酷なシーンに見舞われる可能性が高いと思います。しかしそこはプロのレーシングドライバーとして、しっかりと気を引き締めて走行し、なによりも完走を一番の目標としています。この世界一過酷なニュルブルクリンク24時間レースで完走するという事は、最も高いハードルのひとつ。チームメイトと力を合わせて頑張りたいと思いますので、応援よろしくお願い致します。